藤本タツキ 読み切り作品 さよなら絵梨について解説 

漫画

藤本タツキ先生と言えばやはり連載中の「チェンソーマン」のイメージが強いかと思います。

ただ、読み切り作品である「ルックバック」の公開をきっかけに藤本タツキ先生の読み切り作品にも注目が集まるようになりました。

藤本タツキ先生の読み切り作品にもいろいろなものがあるのですが、今回はその中から「さよなら絵梨」について解説していきたいと思います。

複雑な作品なのでどうしてもネタバレ要素が出てきてしまう部分はご容赦ください。

「さよなら絵梨」の基本情報

「さよなら絵梨」はWebおよびアプリの少年ジャンプ+にて2022年4月11日(月)0:00に公開されました。

「さよなら絵梨」の前に公開した読み切りがあの「ルックバック」なのですが、「ルックバック」が全143ページだったのに対して、「さよなら絵梨」は全200ページという超大作の読み切りとなっています。

「ルックバック」のときと同じように公開からすぐに閲覧数が伸びに伸び、やはりネット上でも話題になりました。

全1巻の単行本にもなっており、2022年7月4日(月)に発売されています。

「さよなら絵梨」の作品概要

「さよなら絵梨」では主人公の伊藤優太が余命わずかの母親が亡くなるまでの様子をスマートフォンで撮影し、それを学校で上映するというところからストーリーが展開していきます。

読み進めていくうちに読者がそのまま映画の視聴者になっていたり、どこからどこまでが現実なのかわからなかったりととても奥深い作品となっています。

集英社公式サイトでは以下のように紹介されています。

「私が死ぬまでを撮ってほしい──病の母の願いで始まった優太の映画制作。母の死後、自殺しようとした優太は謎の美少女・絵梨と出会う。2人は共同で映画を作り始めるが、絵梨はある秘密を抱えていた…。現実と創作が交錯しエクスプローションする、映画に懸けた青春物語!!」

デッドエクスプローション・マザー

「さよなら絵梨」では優太が余命わずかの母親が亡くなるまでの様子をスマートフォンで撮影し、それを学校で上映するところから始まるのですが、そのドキュメンタリー映画のタイトルが「デッドエクスプローション・マザー」です。

「デッドエクスプローション・マザー」を学校で上映したところ、クソ映画とボロクソに言われています。

その理由は映画のラストにありました。

死ぬ瞬間まで撮ってほしいと言われた優太はそれを拒否し、病院から逃げます。

その背後で大爆発が起こって、母親に別れを告げるといういわゆる爆発オチのラストだったのです。

実際に優太の母親は亡くなっているわけですし、母親との日常からの唐突な爆発オチということで酷評されていまいます。

ただ、優太の背景を知るとこの映画への印象も変わってきます。

というのも、優太は複雑な家庭環境の中で母親から虐待を受けていたからです。

当然、学校で映画を見た先生や同級生たちもそのことは知らないでしょう。

だからこそ、クソ映画という評価になってしまったわけです。

絵梨との出会いと「さよなら絵梨」というクソ映画

「デッドエクスプローション・マザー」という映画は優太がすべてをかけて作ったものでした。

それをクソ映画と全否定されて、優太は自殺を考えます。

そこで出会ったのが絵梨でした。

優太の映画に感動したという絵梨の提案で、優太は3年生の文化祭で公開する映画の撮影に向けて動き出します。

絵梨を吸血鬼の設定にし、その吸血鬼が病気にかかり、その死までの姿を撮り続けることになったのですが、撮影の途中で実は絵梨が本当に病気だったことが発覚します。

大きなショックを受けながらどうにか最後まで撮影を終え、その映画は文化祭で公開され、視聴していた生徒たちは涙を流すのでした。

その後、優太は絵梨の映画を編集し続けながら大人になります。

結婚もして幸せな家庭を築いていた優太でしたが、ある日、交通事故で家族を一度にすべて失ってしまいます。

自殺を考えて思い出の場所へと向かうとそこには死んだはずの絵梨がいて、実は本当に吸血鬼だったことが明かされるのでした。

優太は結局、絵梨にさよならを告げて立ち去り、その背後では爆発が起こり……という最後の最後で読者もまた「さよなら絵梨」というクソ映画を視聴することになっていたと気づかされる仕掛けとなっています。

まとめ

藤本タツキ先生の作品は読み切りに限らず、賛否がわかれやすい傾向にあります。

「さよなら絵梨」についてもやはり意見がわかれているようですが、だからこそ一度は読むべき作品だと思います。

そこからどこまでが現実なのか、どこからどこまでが映画なのか……この答えはひとりひとり違うかと思いますが、それもまたこの作品の魅力なのです。

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